3日目 菩提庵 三千浦
6時に起き、昨日の夜買っておいたパリスバゲットのパンを朝食とし、7時過ぎに宿を出る。
薄曇りの天気だ。せっかく菩提庵(ポリアム)に行くのになあ。
昼食難民にならないよう、バスターミナルに向かう途中のセブンイレブンで、おにぎりを買っておく。
菩提庵は山の頂上だから、食堂があるか分からないからね。
バスターミナル券売所で菩提庵に行くにはどうするかと聞くと、
福谷(プクゴク)でシャトルバスに乗り換えるとのこと。どちらにせよそうなのね。
下調べでは8時発が菩提庵行きと思っていたが、菩提庵の駐車場、福谷までしか行かず、
そこでシャトルバスに乗り換えるということ。
ターミナル前の宿が満室だったから、ひょっとして8時発のバスも混雑するのではないか、
まあ分からないからね、予測するしかない。
しかし杞憂に終わった。バスはガラガラ。
若い軍人さんが部隊が近くにあるのか、多く乗ってきたが、菩提庵への参拝客は少ないようだ。
バスは30分程で福谷へ。途中ガスっていたので、天気は心配されたが、一気に晴れた。快晴だ。
そして駐車場は広大で、すでに多くが駐車している。
まだ8時半なのに。もうこの混雑か。
ひょっとして、すごい観光地なのかも。秘境感があると思ってたけど。
シャトルバスはひっきりなしに次々とやってくる。
参拝客も多いけど、これくらいバスがバンバン来れば、待つ必要なし。
帰りは歩こうと思っていたので、片道W1,000だけ払う。
シャトルバスは10分位、せまい山道をひたすら登って行き、菩提庵の入口に着く。
乗用車も20台位停められるけど、許可車両か身障者向けなのだろう。
菩提庵の入口から20分くらい山道を登り、境内となる。
素晴らしい眺めだ。すっかり霧はなくなり、尚州(サンジュ)銀砂ビーチが見下ろせる。
菩提庵というより、この眺望目当ての人がほとんどではなかろうか。
岩山は格好よく、一方海側は遠い島影にうっすらと、もやがかかり幻想的だ。
境内を一通り散策。
お経が聞こえ、純粋に拝みに来ている人もいるのだけど、
街中を歩くような格好の人も多く、観光地感が強い。
ここも韓の国三十三観音聖地の一つである。
しかしなあ、いつ決められたのだろう。最近まで知らなかったよ。
このうち、もう結構な数、行ってるはず。
数えてみたら、この菩提庵を含めると20ヶ所行ってた。
案内板に従って、行ってみると、結構な下り階段を進んでいくことになり、
5分程度歩くと小さな庵に着いた。
庵自体は特に見どころという訳ではないが、ここからの眺めもいい。
また違った角度で尚州海岸が見られる。
3人組のアラサー位の男女がいて、写真を撮り合っていた。
その中の女性が「写真撮りましょうか」と声をかけてくれ、撮ってもらったが、
逆光で顔が黒くなってしまった。なので気を遣って、何枚か撮りなおしてくれた。
「ありがとう。私は日本から来たんですよ」と話すと、
別の男性が日本語ができ、日本に11年程住んでいて、八王子にいたとのこと。
なので日本語で少し会話した。日本人とこんな所で会うとはと驚いていた。
しばらく話した後、「良い旅を」と言ってくれ別れた。
S大学に留学してもいたというので、久しぶりに話す日本語だったとは言っても、
ほぼ完璧に話せていた。やはり語学上達にはしばらく住むのがいいようだな。
この出会いのように、日本人だからといって、韓国でいやな対応をされたことはない。
好意的である。
本来、加川村はこの後に行こうと予定はしていたが、
昨日行くことができたので、今日は余裕のある行動がとれる。
なので菩提庵の後は、錦山(クムサン)の頂上に行くことにする。
とはいえ、10分程度で行けるところだけど。巨大な岩が見えてきたら、もう頂上だ。
お天気さまさま、いい眺め。12時少し前なので、せっかく用意してきたおにぎりでお昼とする。
単なるおにぎりが大層なご馳走に感じる瞬間。
韓国まで来て、山の頂上でおにぎりを食べてる日本人は果たしてどれくらいいるのだろう。
韓国はハイカーが多く、登山道は整備されているから、
韓国でハイキングをという日本人が増えてもいいのにな。
そして、これだけ見下ろして気になった尚州海岸まで、ハイキングしつつ下山していくことにした。
登りはシャトルバスで来ておいて、下山だけ歩くなんて邪道だと思うけど、まあいいよね。
スマホのGPS機能が非常に役立った。
コースが合っているか、あとどれくらいで着くかが分かる。便利な世の中だ。
かつて慶州の南山で遭難しそうな時に持っていれば、よかったなあと思い出した。
下山し始めて、すぐに光が変わったなと思える空間があった。
なんなのだろう、この感じ。巨大な岩と木々の緑。
下から吹き上げて来る風。何とも言えず、何かを感じる空間である。
降りていくと岩に穴が開き、下の方が見える。風はこの穴を通り抜けて来ている。
穴はいくつか開いていて、その一つは登山道になっていて、降りていくと岩の中に入れる。
上にも穴は開いていて、日光が差し込む。
スキューバダイビングだとしたら、洞窟、地形ポイントといったところ。
それが地上の山の中にある。
双虹門(サンホンムン)と呼ばれる所で、サンドゥ学校へ行こうでもロケ地として使われたとのこと。
忘れてしまったけど、出てきたかなあ。
それにしてもこの穴は自然に開いたのか、人工的なものなのか。
虹が二つかかっているような様が人工でないとしたら、すごいな。
印象的な所を過ぎ、さらに降りていく。
ここを登ってくる人ももちろんたくさんいる。
でもねえ、間違って登って来ちゃった的な格好の人が多いな。
極めつけは白金マダムのようなきれいな服、ロングスカート、ぺたんこパンプスのような靴。
親子だったけど、果たして菩提庵までたどり着けたのだろうか。
水のせせらぎが聞こえてきた。ひざはガクガク、震えが始まっている。
リュックは7キロ位、それも下山から歩き始めたせいか、いや暑さのせいか、もう日焼けしまくりだし。
ということで大休憩。靴を脱いで、足を川の水につける。ひゃー生き返る。冷たい、気持ちいい。
私のこの様を見て、真似をして、靴を脱ぎだすおじさんもいたりして。
さあ復活。行くよ。
下山2キロ、1時間程度で錦山の登山口に到着。
売店があり、アイスキャンディーで涼をとる。
ここからは車道を海岸まで歩いていく。
振り返ると錦山の岩々が見える。結構降りてきたんだ。681mの山だったようだ。
この辺りはのどかな風景が続く。
どこでもドアでいきなりこの場所に来たら、日本のどこかの田舎と何ら変わりはないと思うだろう。
たまにあるハングルの看板を見なければ。
海岸が見えてきた。尚州銀砂ビーチと言われるように、白砂が美しいビーチだ。
さすがにまだ泳いでいる人はいないが、子供たちは波打ち際で遊んでいる。
ビーチを横切り、さてこれからどうしようか。15時前。
今日の予定の目的地としている三千浦(サムチョンポ)に向かっていこうか。
バス停で待つと幸運にもすぐ弥助(ミジョ)行きバスが来て、乗り込む。
弥助は近い。ひなびた漁村と言ったところ。
これまたラッキーなことに知足(チジョク)方面に行くバスが5分後だったので、すぐに乗る。
ラッキーなんだよ。だって1時間に1本もない位の本数だから。
バスに揺られる。これで今回は南海島の大半を廻ったことになる。
知足で降り、20分位待ち、三千浦行きのバスに乗る。
このとき16時くらいの日差しが強かった。
浴びながら今この瞬間、日焼けしてると実感できたくらいだった。
三千浦へは橋をいくつか渡っていく。
さよなら南海。少しさびしくなる。
三千浦大橋を渡り切り、泗川(サチョン)市に入る。
橋を近くで見たかったので、バスを下車する。海辺に出る。
この辺りは港になっていて、漁船が多く停泊している。
大橋が見えたが、これまた逆光。
ずっと海沿いを歩いていく。そのうち市場に着いた。
お昼はおにぎりだけだったので、17時と早めだけど、夕食を市場近くでとろう。
市場近くだから、海鮮ものをと適当な食堂に入る。
これがはずれだった。
一人で入るや否や一人前だとフェドッパプ(刺身丼)しかないですよと言われ、
それにしたが、白身魚の刺身はうまかったんだけど・・・。
そのままだとゴマ油風味、そのまま食べときゃよかった。
コチュジャンを少し入れ、混ぜたらコチュジャンの味しかしなくなってしまった。
野菜には大葉が入っていて、大葉の味が目立ち過ぎ、あと刻みリンゴも入ってる。
刺身にリンゴ、コチュジャン、混ぜご飯?やはり刺身はそれだけで食べた方がうまかったな。
まあたまには失敗もあるさ。
夕食後にカフェで一息つこうとカフェを探しに探したが、見つけられなかった。
この旅初めてのあてどのない歩き。
かつてはこんなのばっかりやって、歩きすぎるほど歩いたものだ。
まっ、これも旅ならではだよ。
19時を過ぎて、やっと暗くなり始めたので、ノサン公園で三千浦大橋の夜景を撮るべく夜景待ちへ。
散策にはいい公園なので、人は多い。
20時まで粘り、それなりに夜景が撮れたので、コンビニで買い出し、
海辺に近いホテル街できれいそうに見えるホテルに入り、空室ありということで宿泊。
夕食が早目だったこともあり、部屋でカップラーメンの夜食を。
これも旅ならでは。